2023/09/22
リスティング広告の費用はどれくらい? 知っておきたい仕組みや相場
デジタル化が加速する現代市場で効率的に見込み客を集めるためには、リスティング広告の戦略的活用が欠かせません。そして、リスティング広告の運用における重要課題のひとつが予算の策定です。本記事では、リスティング広告の費用相場や予算を決める基準、費用対効果を高める具体的な施策などについて解説します。
目次
リスティング広告の費用相場
リスティング広告は広告主がクリック単価を設定するとともに、競合他社との入札競争によって広告の表示順位が決定されます。新聞広告であれば広告の掲載面やサイズ、発行部数などによって相場が設定されていますが、リスティング広告にはそうした基準が存在しません。そのため、組織の事業規模やビジネスモデル、あるいは入札するキーワードなどで必要な予算が大きく異なります。リスティング広告の運用ノウハウが確立されていない場合、まずは月額20〜30万円程度を目安としてスタートするのが一般的です。
たとえば、基礎化粧品の販売企業が「新商品の化粧水トライアルセットを提供し、一カ月間に30人の新規顧客を開拓する」という目標を定めたとします。トライアルセットのコンバージョン率(CVR)を1.5%と仮定した場合、一カ月間に30人の新規申し込みを獲得するためには月間2,000アクセスが必要です。「化粧水 敏感肌」や「化粧水 脂性肌」といったキーワードの入札単価は50〜200円程度であり、月間2,000アクセスを獲得するためには10〜40万円の広告費が必要という計算になります。
リスティング広告は最低出稿額が定められていない
リスティング広告は原則として最低出稿額の規定がないため、自社の広告予算に応じてコストモデルを柔軟に設計できます。リスティング広告の予算を策定する具体的な指標や方法は後述しますが、コンバージョン(CV)の目標値と顧客獲得単価(CPA)を考慮して設定するのが一般的です。CVは商品の購入やサービスの申し込みといった最終的な成果を指します。CPAはCV一件あたりの獲得単価を意味しており、「CPA=コスト÷CV数」で算出される指標です。
リスティング広告費用を決定する2つの仕組み
リスティング広告の特徴は「クリック課金制」と「オークション制」という2つの仕組みです。ここではリスティング広告の費用を決定する仕組みについて解説します。
クリック課金制(CPC)
リスティング広告は検索エンジンの検索結果画面に表示される広告であり、クリック課金制を採用している点が大きな特徴です。ユーザーが広告をクリックしてはじめて広告費が発生することから、「Pay Per Click」の頭文字をとってPPC広告とも呼ばれます。キーワードの競合性によってクリック単価が変動するため、いかにして競合他社が気付いておらず、なおかつ購買意欲の高いキーワードを発掘するかが重要です。クリック単価の概算は「Googleキーワードプランナー」で調べられます。
オークション制
上述したように、リスティング広告のクリック単価はキーワードの競合性によって変動します。これは広告出稿時に広告主が任意のクリック単価を決定し、競合とのオークション形式によって掲載順位が決定されるからです。そのため、ビッグキーワードは多くのアクセスを獲得できますが競合性が高く、クリック単価とCPAが高額になる傾向にあります。それに対して、ロングテールキーワードや複合キーワードは競合性が低く、クリック単価とCPAを抑えられるものの、検索ボリュームが少ないためトラフィックの獲得には不向きです。
リスティング広告の予算を決める4つの方法
リスティング広告の予算を定める基準はさまざまですが、代表的な指標としては以下の4つが挙げられます。
1. クリック単価の相場で決める
リスティング広告の予算を定める指標のひとつはクリック単価です。Googleキーワードプランナーでクリック単価の相場を調査し、想定されるクリック数やCVRなどを考慮しながら広告予算を決定します。CVRは業種・業界や商材の検討期間によって大きく異なりますが、通年的に需要のある業界であれば0.5〜3%程度が目安です。運用初期の段階では想定クリック数の正確な予測は困難なため、一日の上限予算を設定して流入数の増大による予算オーバーを防止する必要があります。
2. 売上目標で決める
売上目標から逆算的にリスティング広告の予算を策定するのも方法のひとつです。売上高に対する広告宣伝費の比率は業種や業界によって異なりますが、一般的には1〜20%程度とされています。商品の売上目標を100万円と仮定するのであれば、その20%にあたる20万円をリスティング広告の上限予算に設定します。ただし、広告宣伝費の増大はキャッシュフローの悪化を招く可能性があるため、組織の財務状況やマーケティング全体の予算などを考慮しながら広告費を設定しなくてはなりません。
3. 目標値(CV・CPA)で決める
販売価格5,000円、利益率50%の商品があると仮定します。顧客一人あたりの平均購入回数を5回とするなら、「5,000円(購入単価)×1個(平均購入個数)×5回(平均購入回数)」で、顧客生涯価値(LTV)は25,000円です。利益率が50%でLTVが25,000円の場合、CPAが12,500円を上回ると赤字になります。30%の利益を確保したい場合、7,500円が顧客一人あたりの目標利益となるため、「12,500円(限界CPA)-7,500円(目標利益)」でCPAの目標値は5,000円です。月間30件をCVの目標とするなら、「30件(目標CV)×5,000円(目標CPA)」で広告予算は15万円と算出されます。
4. 出稿停止ラインで決める
リスティング広告は一日の上限予算を設定することでクリック数の制限が可能です。たとえば一カ月の広告予算を30万円とするなら、一日の上限予算を1万円に設定することで予算オーバーを防止できます。したがって、投入できる広告費の限界値をあらかじめ設定し、その基準値を超えた段階で広告出稿を停止するのも方法のひとつです。ただし、その場合は売上機会の損失につながる可能性がある点に注意しなくてはなりません。また、目標CPAの未達期間が3カ月続いた場合は広告出稿を停止するといったように、期限や期間で決定する方法もあります。
リスティング広告の費用対効果を上げる7つの方法
リスティング広告は工夫次第で費用対効果を大きく高められます。その代表的な施策として挙げられるのが以下の7つです。
1. 広告ランクを上げる
リスティング広告の表示順位は入札単価だけでなく、広告の品質スコアが大きく関わります。品質スコアは「推定クリック率」「広告の関連性」「ランディングページの利便性」という3つの要素で決定されます。この3要素は広告の過去のクリック率とインプレッションの実績、そしてユーザーの検索意図と一致する有益なコンテンツを提供しているかどうかを図る指標です。この品質スコアと入札単価によって広告ランクが定まり、それによってリスティング広告の掲載順位が変動します。したがって、リスティング広告の費用対効果を高めるためには、適切な広告予算を確保するとともにランディングページの品質向上が不可欠です。
2. 除外キーワードを設定する
リスティング広告における重要課題のひとつはキーワードの選定です。たとえば脂性肌向けの化粧水を販売していると仮定した場合、見込み客は「顔 ベタつき」や「肌 脂 改善」といったキーワードを検索窓に打ち込むと予測されます。反対に「顔 乾燥肌」や「肌 カサカサ」といったキーワードを検索するユーザーは成約につながる可能性は高くありません。このようなケースでは乾燥肌系のキーワードを除外キーワードに設定することが大切です。それにより、成約につながりにくいクリックを最小限に抑えられるため、CVRやCPAの総合的な向上が期待できます。
3. 広告の配信対象者を絞る
リスティング広告は見込み客を狭く深く掘り下げるプロセスが重要です。たとえば「美容液 人気」「化粧水 おすすめ」といったキーワードは検索ボリュームが多い一方、ターゲット像が曖昧でクリック単価も高額です。「肌荒れ くすみ 30代」「お風呂上がり 肌 乾燥」など、ターゲット像を絞り込んだキーワードは商品のコンセプトと見込み客の悩みが一致していれば、検索ボリュームは減少するもののCVRの向上が期待できます。店舗型のビジネスであれば見込み客の年齢層や性別、地域などを限定することで集客の効率化が見込めます。ただし、配信対象の絞り込みは機会損失を招く可能性がある点に注意が必要です。
4. マッチタイプの設定を行う
マッチタイプとは、「完全一致」「フレーズ一致」「部分一致」といったキーワードの配信設定です。「スマートフォン 買い取り」というキーワードを例に挙げると、完全一致では語句の順番も含めてすべて一致している場合のみ広告が表示されます。フレーズ一致では「スマートフォン 買い取り おすすめ」など、前後に別の語句が追加された場合も表示対象となる点が特徴です。部分一致では「スマホ」のような類似するキーワードも対象となる可能性があります。まずは部分一致で広めに配信し、仮説と検証を繰り返しながら段階的に狭めていくことが重要です。
5. ランディングページを最適化する
リスティング広告から確度の高いターゲットを送客できても、ランディングページで購買意欲を刺激できなければCVに至るのは困難です。マーケティング分野には「Not Read(読まない)」「Not Believe(信じない)」「Not Act(行動しない)」という人間心理の三原則があり、これを「3つのNOT」と呼びます。この心理的な障壁を乗り越えるためには、いかにして見込み客の興味・関心を引き付けるかが重要です。そのためには、見込み客の琴線に触れるキーワードをヘッドコピーや見出しに盛り込んだり、商品のベネフィットをわかりやすく伝えたりといったランディングページの最適化が求められます。
6. 指名キーワードで広告を出稿する
企業名や商品名、ブランド名、店舗名といった特定の固有名詞は指名キーワードと呼ばれます。指名キーワードのメリットは、すでに自社のプロダクトを認知しているユーザーに効率的にアプローチできる点です。商品やサービスの知名度が低い場合、広告の表示回数自体は減少します。しかし、指名キーワードを検索窓に打ち込むということは、特定の企業や商品に対して高い関心を示している証です。そのため、広告の配信対象者を絞り込むプロセスと同様に、検索ボリュームは減少するものの確度の高いユーザーの流入が期待できます。
7. 広告代理店に相談する
リスティング広告の運用を広告代理店に依頼するのも検討すべき選択肢のひとつです。リスティング広告の運用は市場調査や需要分析、見込み客の選定、アクセス解析、キーワード調査、競合分析、ランディングページの最適化といった施策が必要であり、相応の知識と経験を有する高度な人材が求められます。自社でリスティング広告の運用をして想定する成果が出ない場合は、広告代理店にアウトソーシングすべきかもしれません。広告運用を任せることで業績の向上に直結する業務に自社の人的資源を投入できるため、広告運用の手数料を支払う以上の収益を得られる可能性が高まります。
広告代理店に任せる場合のメリット・デメリットや費用
広告代理店にリスティング広告の運用を任せる場合、そのメリットとデメリットを把握することが重要です。ここでは広告運用をアウトソースするメリット・デメリットと費用の一例について解説します。
広告代理店に任せる場合のメリット
広告代理店にリスティング広告の運用を依頼するメリットのひとつは、広告戦略のキャンペーン設計に自社のリソースを割く必要がない点です。広告代理店はマーケティングの専門家であり、高度な知識と経験で広告運用とランディングページの最適化を支援してくれます。リスティング広告の運用におけるキーワード選定やランディングページの改善、ターゲティング、アクセス解析などの業務は非常に重要ではあるものの、それ自体が企業価値の向上につながるわけではありません。こうした業務をアウトソースできれば、製品設計や商品開発、品質管理、新規顧客の開拓、既存顧客のアフターフォローといったコア業務に自社のリソースを集中できます。
広告代理店に任せる場合のデメリット
広告代理店にリスティング広告の運用を任せるデメリットは、ノウハウが蓄積されない点です。リスティング広告の運用では見込み客が抱える悩みや課題を深く掘り下げ、そのユーザーが検索窓に打ち込むキーワードを分析・予測します。これらの業務は業績の向上に直結するわけではありませんが、顧客理解を深める上で非常に重要な意味合いをもちます。見込み客が何に悩み、どのような課題を抱え、どうなりたいと願っているのかを知ることは商品開発における重要なヒントであり、競合他社との差別化を図るために欠かせない要素です。広告運用のアウトソースはこうした知見が自社に蓄積されず、さらに継続的な手数料を支払い続ける必要性が生じる点がデメリットに挙げられます。
広告代理店に支払う費用の一例
広告代理店に支払う費用としては「初期費用」と「運用手数料」の2点が挙げられます。リスティング広告のアカウント作成や初期設定などに5万円前後の初期費用が発生し、広告運用手数料として広告費の20%前後を支払うという形態が一般的です。たとえば、一カ月あたりの広告費が30万円であれば、広告代理店に6万円の手数料を支払う必要があります。ただし、こうした費用は広告代理店によって大きく異なる点に注意が必要です。プランによって初期費用が無料になる場合があれば、広告手数料を定額で固定している企業もあります。また、広告費の最低出稿金額を設定しているケースも少なくないため、事前に確認しておくことが大切です。
リスティング広告の運用は相応の知識と経験を要するため、必ずしも自社運用が正解とは限りません。しかし、リスティング広告の運用を通じて得られるノウハウは顧客理解を深める上で貴重な財産となります。自社運用とアウトソーシングはどちらが正解とは一概にはいえません。自社の事業形態や広告予算などを鑑みながら慎重な判断を下してください。
まとめ
リスティング広告は事業規模やビジネスモデル、入札キーワードなどで必要な予算が異なります。運用ノウハウが確立されていない場合は月額20~30万円程度の予算でスタートするのが一般的です。予算を策定する際はクリック単価や売上目標、CVR、出稿停止ラインなどを基準とします。費用対効果を上げる方法としては、広告ランクの上昇や除外キーワードの設定、ランディングページの最適化といった施策が挙げられます。自社でリスティング広告を運用するリソースを確保できない場合、広告代理店に外注するのも有効な手段です。ただし、その場合はメリットとデメリットを秤にかけ、慎重な判断を下す必要があります。
この記事の執筆者
ナインメディア編集部