2023/12/01
PRと広告の違いってなに? 広報との違いや種類、効果的な施策例も
自社の商品やサービス、ブランドイメージを改善するために行うのがPRや広告です。消費者に対し、自社のイメージを認知させるうえで重要な施策ですが、それぞれの効果ややり方には違いがあるため注意が必要です。
そこでここでは、PRと広告の違いや効果、効果的な使用方法について解説します。
目次
PRと広告の5つの違い
PR(パブリックリレーションズ)と広告は、ビジネスやブランドのプロモーションに使用されるマーケティング手法ですが、それぞれ手法や目的などに違いがあります。
ここではそれらの違いを明確にして、それぞれどのようなマーケティングで取り扱うべきかを解説します。
目的
PRは主に企業や公共団体によって行われ、顧客やステークホルダーとの関係構築を目的とします。PR活動では、メディアやパートナーに対し、良好なイメージや関係の構築、公共の関心を喚起することを目指します。組織の信頼性や専門知識のアピールを通じて信用を獲得し、長期的な関係を築くことが重視されます。
一方、広告の目的は、商品やサービスの販売促進です。広告は特定のターゲット層に対して直接的なメッセージを送り、商品・サービスの魅力や利点を伝えることを目指します。広告は一時的な関心を喚起し、消費者の購買意欲を高めるために利用されます。
このようにPRと広告の目的の違いは、長期的な関係・信頼の構築に焦点を当てるか、一時的な売上向上に焦点を当てるかという点にあります。
発信者
PRと広告では、発信者が異なります。PRは企業ではなく、メディアや一般の消費者などによって発信されます。ただし、第三者による発信は、情報の内容を細かくコントロールできないという難点があります。
一方、広告の場合、発信は商品・サービスを提供する企業によって行われます。実際には、広告を制作・配信する代理店や制作会社に委託され、費用を払うことでメディアに載せて発信されます。広告主は伝えたいメッセージを決定し、広告代理店や制作会社はそのメッセージを視覚的・言語的に表現し、適切なメディアで展開します。広告は、広告主の意向で的確に情報をコントロールでき、企業の戦略をそのまま投影できます。
信頼性
PRの強みは、信頼性の構築です。PR活動は企業やブランドの信頼性を高めるために、メディアや一般の方を活用します。第三者という公平な立場から発信されることで、企業自身で行うよりも情報の信頼性を高められます。
一方、広告は信頼性を伝える手段としては効果が限定的です。一般的に広告は営利目的として企業にとって都合の良い情報のみを伝えられるため、消費者からはその内容に一定の疑念が持たれることもあります。そのため、信頼性を高める手段としては、PRのほうが有効です。
効果が出るまでの時間
PRの効果が現れるまでには時間がかかる場合があります。メディアの注目を集めるためには、メディアリレーションの構築やプレスリリースの配信、イベントの開催などが必要です。また、メディアが発信する期間や掲載される媒体を企業側で決めることができません。PRは、基本的に特定の商品の売上といった直接的な反応に結びつきにくく、どの程度の効果が出ているかを測定するのは、広告と比べて難しい傾向です。とはいえ、目的を達成できていた場合には、長い期間にわたって持続的な効果が期待できます。
一方、広告は比較的短期間で効果が現れます。特定のターゲットに向けて直接的なメッセージを伝えるため、広告の配信が始まってすぐに反応が得られやすく、訴求した特定の商品の売上が増加するといった効果が見られます。広告の効果は、同時に行うキャンペーンや広告の頻度によっても左右されますが、多くは一時的なものであり、出稿した期間に限られます。
費用
PRの費用は、広告に比べて一般的に割安です。メディアリレーションの構築、プレスリリースの作成と配信、イベントの開催などにかかる費用のみで、メディアへの掲載には金銭が発生しません。そのため、比較的低コストで広報活動を展開できます。
広告では、一定の費用を必要とします。広告の制作やメディアへの配信には、それぞれ製作費・掲載費がかかります。費用は広告主の予算と目標に応じて異なり、広告の規模や掲載の頻度によっても変動します。例えば、全国的な広告展開といった広い規模を対象としたり、長期間の出稿を行う場合では、膨大な費用が必要となることがあります。
ちなみにPRと広報の違いは?
広報はPR(パブリックリレーションズ)の訳語からきており、よく同じ意味で使用されますが、この2つにもわずかな違いがあります。
前述のように、PRはメディアやステークホルダーとの関係構築を目的に企業などの組織が行う戦略的な活動です。PRはマーケティングコミュニケーションの一部であり、ブランドのイメージ向上や信頼性の確立に焦点を当てます。
広報は、企業や団体の情報を一般に伝えるための活動です。プレスリリースの作成や報道機関との連絡、公共のイベントの企画などを通じて、企業や団体の情報を広く知らせることを目的とします。広報は主にメディアを通じて情報発信を行います。
このように、広報は一方向的な発信のみを扱う側面が強く、PRによる組織間または対人への関係構築のような、双方的なコミュニケーションは行われません。また、PR活動には広報が内包されており、情報発信の一環として実施されます。
なお、PRとアピールの混同もよく見られます。アピールは「訴え」と訳され、こちらも一方向的な主張を意味します。そのため、双方的であるPRとは、使い方が大きく異なります。
3種類のPR
PR手法には3つの方法があります。それぞれどのような意味合いがあるのかを、詳しく解説します。
企業PR
企業PRは、企業自体のイメージや信頼性を向上させるPR活動です。企業のステークホルダーに対して良好な信頼関係を築くことを目的とします。
具体的には、企業の価値観やミッション、ビジョンを明確に伝えることで、企業のブランドイメージを顧客に浸透させます。プレスリリースや広報イベント、SNS、オウンドメディアなどさまざまな手段を通じてPRを行うことで、企業の最新情報や成果、社会貢献活動などを広く発信し、企業の知名度と信頼性を高めます。
以前の消費者行動は「モノ消費」が一般的でしたが、現在は「コト消費」「イミ消費」にとって変わりました。例えば、環境保護や差別、搾取などに配慮した企業は、ブランドとしての付加価値を与えます。このような企業イメージが商品の売上に直結する時代になったからこそ、企業PRの意味合いも大きくなっています。
商品PR
商品PRは、企業のファンを増やすことを目的として、商品やサービスの特長・魅力を広く知らせるPR活動です。顧客の関心を引き、商品の認知度を高め、購買意欲を喚起します。
商品PRの手法には、オウンドメディアや運営するWebサイトでの商品紹介、インフルエンサーを活用した発信、ソーシャルメディアの活用などがあります。このような宣伝活動を通じて、商品の特長や利点をアピールすることで、競合他社との差別化が可能です。
このような商品PRを成功させるためには、ターゲット市場や消費者のニーズに合ったメッセージを効果的に伝えることが重要です。商品の魅力を伝え、消費者の購買意欲を高めることで、企業の売上や市場シェアの拡大に寄与します。また、顧客のフィードバックやレビューを活用して、商品の改良や顧客満足度の向上にも取り組みます。
公共団体PR
公共団体PRは、政府機関や地方自治体、非営利団体などが自身の目的や活動を広く周知し、公衆に対して情報を提供するためのPR活動です。市民や利害関係者に対して、公共の利益を促進するためのコミュニケーションを行います。
公共団体PRでは、行政の施策やイベント、地域の魅力などを積極的に広報します。具体的な手法は、PR動画の公開や公式サイトのコンテンツ拡充、ソーシャルメディアの活用、イベントやセミナーの開催などです。
特に、最近では地域性を前面に押し出したPR動画が多くの自治体で制作されており、他地域でも広く話題になるなどの成果を生み出しています。
市民参加やフィードバックの促進も公共団体PRの重要な要素です。これにより市民の関心と信頼を得るために重要な役割を果たし、地域の発展と市民の満足度を向上することが可能です。
PRの注意点
PRを行う場合には、以下の点に注意しなければいけません。
・プロモーションの管理に限界がある
・意図しないイメージを植え付けてしまうことがある
前述のように、PRは自社でコントロールすることが難しいため、ターゲティングや的確な宣伝が難しいという問題があります。どのような情報を出してどのようにPRをするのかを決めるのは、メディアや一般の方なので、本来の狙いに的確にアプローチできるとは限りません。
さらに、情報が拡散していくなかで、意図しないイメージを顧客に植え付けてしまうことがあります。配慮の欠けた情報を提示したことで、かえって企業や商品イメージを損なってしまったり、事実が歪曲した結果、意図せずステルスマーケティングだと誤解されてしまったりするといった問題が起こりえます。
3種類の広告出稿方法
広告には大きく分けて3つの種類があります。ここではそれぞれの出稿方法について紹介します。
マス広告
マス広告とは、ラジオ、テレビ、新聞、雑誌の4つのメディアを使用して広告を打つことを言います。それぞれ以下のような特徴があります。
・ラジオ広告
音声だけで宣伝する手法です。ラジオアプリのユーザーは40代以上が半数を占めており、中高年層への訴求に向きます。
・テレビ広告
認知度が高く信頼性の高いメディアです。テレビに出稿しているというだけでも、ある程度の信頼性が確保できます。
・新聞広告
紙面の一部や一面を借りて広告を出稿します。若年層よりも中高年層へのアプローチが主流ですが、内容を読んでもらえる可能性が高いという利点があります。
・雑誌広告
雑誌はアプローチできる層がわかりやすいメディアです。雑誌ごとに利用者の性別や年齢が把握しやすいため、ピンポイントな広告が打てます。
Web広告
Web広告には、以下のようにさまざまな種類があります。
・リスティング広告
Googleなどの検索エンジンで、検索結果の上部などに表示されるタイプの広告です。検索キーワードに応じた広告を出稿でき、クリック数に応じた費用が発生します。
・ディスプレイ広告
各Webサイト上に、画像や動画の形式で表示される広告です。バナー広告とも呼ばれ、比較的安価に出稿できるメリットがあります。
・SNS広告
TwitterなどのSNS上で一般的な投稿と同様の形式で表示される広告です。共有などの基本機能が搭載されているため拡散されやすく、普段の利用傾向からユーザー属性が割り出されていて、ターゲティングに有効といった特長があります。
・アフィリエイト広告
アフィリエイトプログラム参加者に自身のブログやWebサイトで宣伝してもらう広告です。広告表示やクリックではなく、商品の購入といった成果につながった場合のみ費用が発生するよう設定できるため、費用を抑えて出稿できます。
いずれも広告のクリックによって、商品購入や利用申込フォーム、自社サイトへの流入を行えるため、直接的な成果につながりやすいのが特長です。
SP広告
SP広告はセールスプロモーション広告の略称で、ここまでに紹介したマス広告・Web広告以外の広告手段の多くが該当します。代表的なものは以下の2つです。
・OOH(Out Of Home)
ポスターや看板など、屋外広告全般を指します。近年では、デジタルサイネージと呼ばれるディスプレイを用いた街頭広告で、動画を用いたプロモーションが可能です。
・交通広告
電車やバス、タクシーなどの交通機関の車内外や施設に設置する広告です。デジタルサイネージやポスター、ステッカーなどが該当します。学校周辺やオフィス街などの地域や通勤・通学の時間帯でターゲットを絞り込めます。
広告の注意点
広告を利用する際の注意点としては、以下の3つが挙げられます。
・広告出稿に費用がかかる
・広告運用の知識が必要
・抵抗のある人がいる
まず、広告はPRと違い、出稿に費用がかかります。テレビなど、利用する媒体によっては高額の費用がかかるため、費用対効果を見極めなければいけません。さらに運用にはノウハウが必要です。媒体によって表示できるサイズや文字数などの制限があり、効果的に訴求するためにはターゲティングも考慮しなければなりません。
また近年は、広告というだけで抵抗のある方もいます。刷り込みに有効とはいえ、頻繁に同じ内容を繰り返していると、かえってマイナスイメージを抱かれる恐れがあります。
PRや広告の特徴を活かしたマーケティング施策例
記事広告(PR記事)
記事広告とは、第三者がWeb上に公開する、文章を主体とした記事形式の広告です。企業の依頼でマスメディアやインフルエンサーが商品・サービスを紹介する手法であり、あくまで読み物として第三者が主体的にコンテンツを制作します。
メディアのユーザーの多くは、一方的に売り込む広告に対して嫌悪感を示す傾向があります。あくまで客観的な目線で商品のレビューが行われるため、ユーザーが安心して閲覧できます。
ネイティブ広告
ネイティブ広告は、ユーザーが利用するメディアのコンテンツの一部として広告を出稿する手法です。例えば、ニュースなどのメディアの記事一覧に表示されるネイティブ広告は、リンク先でも記事広告の形式が取られます。また、リスティング広告やSNS広告も、一見して自然検索や一般の投稿と同一に見えるよう表示されるため、ネイティブ広告に当たります。
ユーザーが興味のあるコンテンツを探すなかで、関連した記事が広告として表示されるので、嫌悪感を抑えて訴求できます。メディアごとに、ユーザーの行動をもとにセグメントした対象へ広告を表示でき、ターゲティングにも有効です。
PRや広告配信時に重視したい3つのメディア
メディアには以下の3つの種類があり、あわせてトリプルメディアと呼ばれます。
・オウンドメディア
企業が主体となって発信するメディアであり、自社のWebサイトやSNSアカウントを媒体とします。自社で運用していることから管理がしやすく、社内でコンテンツを制作していれば外部への費用がかかりません。
・アーンドメディア
第三者によるメディアであり、PRの一環に当たります。マスメディアの記事やSNS上の消費者による投稿、口コミなどが該当し、企業側に費用は発生しません。前述のように、第三者による発信は情報の信頼性が高い一方で、企業による発信内容の選択といった細かな制御はできません。
・ペイドメディア
企業が費用を支払って発信するメディアであり、広告全般を指します。マス広告やWeb広告、SP広告など、あらゆる形式の広告が含まれます。他の2つのメディアと比較して維持や運用に多大な費用がかかるほか、効果は一時的に留まります。
トリプルメディアは、いずれかひとつに力をいれるのではなく、適切な使い分けや組み合わせが重要です。
例えば、消費者への訴求をペイドメディアのみに頼っていると、長期的には膨大な費用が必要になることに加え、スパム的な手段としてかえって敬遠される恐れがあります。状況に応じてアーンドメディアによる反響が期待できる発信を行いつつ、継続的にオウンドメディアを拡充していくことで、より効率的かつ効果的な運用が見込めます。
このように、PRと広告では、目的や方法、効果に至るまで、さまざまな違いがあります。それぞれの利点・難点を理解したうえで、適切な手法を選択することが大切です。
まとめ
PRと広告のうち、PRは自社が費用をかけずに第三者に宣伝をしてもらうプロモート方法です。SNSやマスメディアなどの第三者が宣伝することで、信頼性が高まるというメリットがある一方、管理が難しく、狙った効果が出ないことがあります。
広告は、費用をかけてサービスを宣伝する手法です。メディアへの広告や屋外広告、Web広告などさまざまな形式があります。管理が容易なため狙った相手へのアプローチができますが、広告を嫌悪しているユーザーに配慮しないとマイナスイメージになる可能性があります。
これら2つは、併用も可能なので、うまく使い分けて的確にユーザーへのアプローチを行いましょう。
この記事の執筆者
ナインメディア編集部